JBLがある風景。
僕は両親が経営するお店で両親と共に働いているのだが、一月ほど前に両親のクラスメイトであった人のお兄さん夫婦がふと遊びに来られた。
その方はトシオさん(仮名)といい、千原せいじさんのお顔をとても優しくしたような風貌のおじさんだった。
お店のトイレのドアには僕の手持ちから無作為に選んだCDを10数枚貼り付けているのだが、トシオさんはトイレから出てきた際にそれをじっと見つめ、傍らでPC作業に勤しんでいる(主にブログ更新)僕に声をかけてきた。
「これは君のお父さんが聴くのかい?」
と、問うた後に「いや、あいつはこんなの聴かないな…」とひとりごちた。
「いや、(聴くのは)僕ですよ!」と僕は応える。
するとトシオさんは嬉しそうに僕に話しかける。
「ストーンローゼズは最高だな」
「キャロル・キングも聴くのか?」
「ブラーはイマイチだった」
「U2もいいもんな!」
「オアシスはどうだ?」
「UKロックはいいもんな」
「おじさんはアメリカンロックが大好きでな」
「今度アレ(僕の知らないバンド名)のCDを持ってくるよ」
「あ、ストーンローゼズのTシャツもあげよう。」
矢継ぎ早に展開するロックトーク。
僕が相槌を打つ前に食い気味で次の話に変わってゆく。
そうか。
やっぱりロックミュージックというのはマイノリティなのだ。
どれだけ夏フェスが増えても、ロックミュージック界隈が盛り上がろうとも、もっと俯瞰した目線に変えるとそれらはおそらく小規模なムーブメントでしかないのだ。
今の日本の10代20代に「ストーンローゼズって知ってるかい?」と聞いて身を乗り出して反応してくる人間が果たしてどれくらいいるのだろう。
でも、逆に言えば全世代に知名度がある音楽というのは陳腐になってしまいがちである。もちろん全部がそうではないが、例えば今のオリコンチャートを見てため息をついてしまう人も必ずいるだろう。
ロックミュージックの立ち位置はこれでいいのだと思う。
バカみたいに売れすぎてしまうと、きっと良くないのだ。
だから、同じ価値観を持つ人間を見つけるとついつい饒舌になってしまう。
歳を重ねれば尚更そうなのだろう。僕みたいな存在が嬉しくて仕方ないのだ。
僕だってそうだ。
殆ど音楽のことしか考えてないような人間だから、同じような人間を見つけるとグイグイと擦り寄ってしまう。誰だって1人では楽しくないのだから。
違うある日、トシオさんは父と話していた。
父は懐かしそうに言う。
「そういえば、地元にいた◯◯先生はかっこつけて色んなオーディオを持ってたよな!」
「あ〜いたなそういうやつ」トシオさんは淡々と返事する。(そう言えば、ロックミュージックが好きな人間はどうしてプライベートではおとなしい人が多いのだろう)
「そういやトシオも音楽好きだったなぁ!」
トシオさんは照れたように頷き、笑う。
「そうよ、この人家を建てる時オーディオの部屋だけはこだわって、他のところはぜーんぜん!」話を聞いていたトシオさんの奥さんは困ったように笑いながら言った。
「スピーカーは何を使ってんの?」と父はトシオさんに聞く。
「JBL?ふーん」あまり詳しくない父は僕に目線を送る。
「JBLはもう、最高ですよ」と僕は返す。確かクラムボンのミトさんが自分たちで機材から何から用意して廻るツアーのメインスピーカーにJBLを採用してたなぁなんてことを思い出しながら。
結局トシオさんは約束してくれたCDやTシャツを自宅の玄関に用意していたのだけど、うっかり忘れてしまったそうで、また今度来る時に持ってきてくれるという事を恥ずかしそうに僕に告げた。
今度持ってきてくれるCDについて「これがあったからおじさんの80年代は救われた」と語っていた。
そうか、この人も音楽に救われた人なのか。
自分の親よりも少し年上のおじさんは、不器用にやさしく微笑んだ。
Amazonプライムミュージックという素晴らしいサービスがある。
SpotifyやAppleMusicに比べると所持しているタイトル数は少ないが、それでもなかなかのもので、最近はよく利用している。
このプライムミュージックというのはiPhoneなどの形態端末でも聴く事が出来、更にデスクトップアプリも存在しているのでPCでもプライムミュージックの音楽を聴くことが出来る。
僕は主にPCをセッテイングしてある場所にスピーカー等を設置してある。音楽を聴く時はそこで聴くのだが。
最近グッと落ちてきた気温にすっかり音を上げてしまい、こたつやカーペット、ストーブなんてのを引っ張り出した。PCがある部屋とは別に。
暖かい空間というのは反則的なまでに幸福感を与えてくれる。そこから動きたくないのだ。漫画や読書、食事、ゲーム。すべてその部屋で出来てしまう。
でもやっぱり音楽も聴きたい。だけど手軽に繋げられるスピーカーがそこには無い。
そこで欲しくなったのがBluetoothスピーカーだ。
Bluetoothなら無線で、しかもとても簡単にペアリング出来て、良い。
Amazonで色々物色していると、見つけてしまった。
JBL GO Bluetoothスピーカー ポータブル/ワイヤレス対応 オレンジ JBLGOORG【国内正規品】
- 出版社/メーカー: JBL
- 発売日: 2015/04/23
- メディア: エレクトロニクス
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すぐにトシオさんの顔が浮かんだ。
他にも安価なスピーカーはあったのだけど、正直もうこれしか選択肢は無かった。
JBL。「最高ですよ」なんて言ったけど、実はまともに聴いたことなんて無かった。
でも「良いもん」だって思い込んでいた。
しばらく悩んだ後、「カートに入れる」ボタンを僕は真顔で押していた。
発送した場所が近かったため、購入した翌日にそれは届いた。
色は悩んで「ティール」にした。なかなか見ない色だ。全てのカラーリングがキュートであるが、色に関しては殆ど迷うことが無かった。
ペアリングも10秒ほどで出来、いざ音楽を聴く。
その小さなサイズとのギャップが甚だしいほどの音が流れ始めた。
音質に関して詳しくレビューできるほど豊富な語彙力は無いから、その音を上手く伝えられないのだけど、僕は十分に満足する事ができた。もう少し高音のヌケが良かったらもっといいのになぁと思うくらい。
それでもiPhoneのスピーカーよりは全然良いし、音の再現度が高い。特にアコースティックギターの音は素晴らしい。もちろん、その値段とボディの小ささならという事だけど。
「スピーカーはずっとJBL」と応えたトシオさんは、例の「救われた80年代」でもJBLを使っていたのだろうか。
時代を越えて、JBLはこんなにも手を出しやすい価格のものを販売してくれるようになった。そこに立派な音響システムが無くても良い。スマートフォンさえあれば良いのだ。
きっとこのスピーカーを通して僕は音楽に「救われ」ていくのだろうと思う。
JBLの「GO」というその機種からはプライムミュージック経由でNakamuraEmiの「やまびこ」が流れていた。独特の声で彼女は歌う。
あの時より輝いてたいじゃんか
あの時より あの時より あの時より あの時より…
今日よりも明日、明日よりも来週、来週よりも来月…
と、自分をアップデートしていきたいのだ。
振り返った時にあの時より輝いてると心から思えるように。
聴いた音楽はその頃の時代を思い出させる効力を持っている。
今この曲を聴いた僕がどうか、いつかまたこの曲を聴いた時に自信を持って「あの頃より輝いてる」と思えますように。
そんなクサイことを思いながら一日を終える。
朝目覚めると、小さい机の上には小さいJBLがあった。当たり前なのだが。
ほんとうに驚くほど小さいスピーカーなのだけれど、それは僕に大きな存在感を与えていて、「早く音楽を鳴らしてよ!」とウズウズしているようだった。
JBLがある風景。それがこんなにもいいものだとは思わなかった。
Bluetoothスピーカーをお探しの方、僕はこのスピーカーしか知らないけど、とても良いですよ。幸せです。
はい、ここまでを要約。
なんか優しそうなおっさんがすげーロック馬鹿で、グイグイ来る。そんなおっさんはJBL信者。
一方その頃、僕はこたつにいながら不精に音楽を聴きたくてBluetoothスピーカーが欲しかった。
探してみるとおっさん御用達のJBLのものがあったからJBLええやんけ!って思ってポチったった。
思ってたより随分小さかったけど、それなりのサウンドが鳴ってくれて、満足。あ、あとNakamuraEmiめっちゃいい。
っていうだけのお話でした。お粗末さーん!