HANABIをMITA.
夏の風物詩、花火。
この花火という言葉は「季語」としても使用できる言葉だ。
逆に言えば「花火」というフレーズを使用してしまえば、それは「夏のもの」に"なってしまう"とも言える。
季節は"これ"と言った分かれ目があるわけではない。
例えば"何月"といった"暦"に決められるものでもない。
それは徐々に徐々に移ろい、気付けばその渦中にいるのだ。
殺人的にまで燦々と照らし続ける太陽、まるで空間が揺らいでいるように見えるアスファルト。
麦わら帽子、浴衣、Tシャツ、汗、焼けた肌。
目に映る全てが風物詩じみていて、そろそろ辟易としてしまう。
ある季節の事を"いいなぁ"と思うのは、その季節じゃない時間であったりする。
夏に冬が恋しくなるように、冬に春が恋しくなるように。
喉元過ぎれば、僕らはいろんな事を忘れてしまう。
そして良かった事だけをピックアップして、自分の記憶を捻じ曲げている。
昨日撮った花火の写真も、いつか「ああ、綺麗だったなぁ」と思うのだろう。
焼け付いて熱くなったアスファルトに腰を下ろしたこと、高い湿度の中ドロドロになったこと、若い学生たちがキラキラとバカ騒ぎしていた光景を忘れて。
なんて。
そんな陰鬱な事を考えてしまったのだが、それらは肌で感じた爆発音と、眩いまでの閃光に紛れて弾けてしまえと思う。
毎年同じ日付に花火が上がること。それを見ることが出来たこと。
その、一見繰り返しの様に思える出来事を愛しく、大切に扱わねばならないのだと思う。
この花火が終わらなくては夏は過ぎてくれない。
この花火が上がってしまうと夏は終わりに向かってしまう。
日常は裏腹に言い換えることが出来て、そのどちらに身を寄せるかで感じ方が変わってしまう。
多角的に物事を観たいと常々思っているが、そう思えるまでにはまだ僕は夏に弱い。
額に汗をかきながら。不意に訪れた低気圧に頭を痛ませながら。