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音楽の事をあんな視点、こんな視点から綴ります。

andropの「blue」を聴いて。

おう、暗いな。

めっちゃくちゃ暗いアルバムだな。

アートワークも怖いな。何とも言えない気持ちになるな。

 

でもね、僕は好き。

そもそも、暗い作品が好きだ。

ミスチルで言えば「深海」や「Q」が大好きだし、「SENSE」で戻ってきた暗さに歓喜したくらいだ。

先日上げた記事にも書いた、宇多田ヒカルの新譜の暗さも最高。 

masacla.hatenablog.com

 

だって、バカみたいに一辺倒な音楽ってのはただただ退屈だから。

 

だから僕はandropの今作を推したい。

正直「relight」以降のアルバムはあまり聴いてなかった。要所要所しか。

ミニアルバムのどれもが大好きで、僕の中でのandrop象は「relight」で完成されてしまっていたから。

 

でも今作「blue」はどうだろう。

完全に仕掛けてきてる。狙ってか、あるいは自然にか。

いずれにせよこれはandropのキャリアの中でも「異質」な作品な事は間違いない。

masacla.hatenablog.com

さて、↑のライブレポートにも書いてあるのだけど、前作「androp」をリリースした後、彼らは個人事務所「Image World」を設立した。

「blue」はその事務所からリリースされる初めての音源である。

 

andropと前事務所や関係者との間に何があったかは想像の域を出ないが、おそらく「何か」があったはず。でなければデビュー当時から面倒を見てくれたであろう事務所を去ることは簡単に出来ることではないだろうから。

 

だからこの作品はこれからのandropにおいて重要な位置付けをされるはずだ。

そしてそんな重要な作品がこんなに「暗い」のは「異常」だ。

これまでのandropとは違うステージ、違うビジョン、違うモチベーションで音楽に挑んでいるのが伝わってくる。

実際、「闇、人間の黒い部分」をテーマに制作されたらしいから「狙って」という事になるのだろうけど。

 

ここからは一曲ずつ取り上げてレビューしていこうと思う。

01:Kaonashi

http://www.androp.jp/lyrics/detail/1622/

ブ厚いフィードバックノイズと共に幕を開ける。

轟音の中、Nine inch Nailsを彷彿とさせるゴリゴリのベースサウンドが入って来、複雑なリズムパターンのドラムが加わっていく。そして内澤崇仁のハイトーンボイス。

こわい。まるでホラーだ。

例えば先に書いたミスチルの「SENSE」というアルバム。

その一曲目に「I」という曲がある。

「あげくは死にたいとか言い出すんでしょ?思い通りにいかない時の一発芸」

などという、歌詞がグサグサと来、初っ端から強烈な印象を与える曲だ。

「Kaonashi」を聴いた時、その事を思い出した。

「殺したいほど憎んだ」で始まるサビ。あまりにもダークだ。

音やメロディ、その他の何よりも"言葉"が入ってくる。

こんな曲、今までandropには無かった。(個人的には、という意味で)

もちろん部分的に歌詞が入ってくることはあったけれど、内澤氏の綴る歌詞はいつも、具体的なようで実は抽象的な物の言い方だったから。

それが、この曲は最初から最後まで耳を離さずに聴いてしまう。歌詞を頭で追ってしまう。狂気を覚えるくらいのドロドロな世界観が心を掴んで離さない。

一回聴いただけでドッと疲れてしまうくらいのパワーがあるのだ。

そしてそのインパクトは、そのまま次曲へと引き継がれる。

あとなんかよく分かんないんだけど、ストロベリーナイトのこの場面にめっちゃ合うなって思った。もう主題歌でも良いレベル。

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02:Irony

http://www.androp.jp/lyrics/detail/1623/

Irony(アイロニー)…皮肉。

 

そう、この曲は文字通り"皮肉"に満ちている。そして反骨精神にも。

これも言葉がこちらの精神を抉ってくる。

「Kaonashi」が鋭痛ならば、「Irony」は鈍痛。

サウンド的には…まるで真夏の夕暮れ時のような湿度と気温を感じる。

額に、背中に、垂れる汗が不快で、体の内側から熱を感じるような。

特に間奏のギターソロなんてもうめっちゃ夏。夕暮れの浜辺で人生に疲れた男が入水自殺でもしてしまいそうな間奏。秀逸。

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(イメージねw)

03:Digi Peace

http://www.androp.jp/lyrics/detail/1624/

「ShowWindow」がもっと洗練され、もっとダークになった感じの一曲。

andropはこういう電子音の使い方が上手い。ギターロックサウンドに気持ちよく馴染んでいる。

内容的にはこのSNS社会を皮肉ってる感じがしますね。「irony」もそうだけど。

電子的な繋がり。物理的な温もりのない関係。重ねる嘘、信じる馬鹿…。

SNSはとても広くて便利な世界だけど、時々はやっぱり冷静に見なくてはいけないな、とアルバム全体を聴いてみて、思う。

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04:Sunny Day

http://www.androp.jp/lyrics/detail/1625/

「Boohoo」を今のandropが鳴らしたらこんな感じになりました!って感じの一曲だなぁと。非常にタイトな曲。バッキバキなベースのイントロが最高。前田さんのベース、チョッパー最高に好き。

で、andropにしては珍しい歌詞世界だなと思った。微妙なエロさが。

世界情勢とネガティブなニュース。その中での自分の立ち位置。

何かしなくてはいけないと思うのだけど、実際にはベッドの上で渇いた音を立ててるくらいの堕落さ。下衆さ。

理想と現実。嘘と本当。善と偽善…。

表裏一体のような、裏腹のような脳内の攻防。

それが切なくもポップなメロディで響いている。佳曲。

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(なんかもうイメージ画像置かないと落ち着かなくなってきたw)

05:Kienai

http://www.androp.jp/lyrics/detail/1626/

andropのギター、佐藤氏作曲の「Kienai」。

なかなかどうして、この曲が一番「andropらしい」曲になっている。

今まで内澤氏がメインになって作り上げてきたandrop像というのはきちんとメンバーの体にも染み込んでいるんだなぁと感じる。そんな、バンドの絆を感じられる一曲。

歌詞に関しては、これまた暗く陰鬱。

自殺願望を吐露するところから始まり、「助けてよ」という言葉で締めくくられる。

この歌詞の主人公が見ている風景はとてつもなく暗い。読んでいて心が痛い。

それでも鳴っているサウンドはこのアルバムの中では比較的快活なもので、詞世界とのちぐはぐなギャップが不思議と心地よさも感じさせる。

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06:Lost

http://www.androp.jp/lyrics/detail/1627/

作詞がドラムの伊藤氏、作曲がベースの前田氏という、大変珍しい曲。

リズム隊がメインになっている派手な曲かと思ったが、意外にもスローテンポで、ピアノが主体のものだった。

全体を通してボーカルエフェクトを強めにかけ、サビではザ・ストロークスのジュリアンを彷彿とさせる無機質さ。

歌詞の内容は…

決して許されることの無い罪。贖罪。絶望感。

季節は冬。真冬。

一面銀世界の真っ直ぐな道を車で走っている。目的地は無い。

目に映るのは白、白、白…。

狂ったように静かで、世界の果てにいるような気分。

…そんなイメージを持ちました。 

オートチューンを使ったボーカルの機械的な音がほんとに、金属っぽく、冷たい質感。

聴いてるこっちまで落ち込んでしまいそうなくらいの世界観ですね。

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(白すぎワロタwwwワロタ……)

総括。

いやぁ、やっぱり暗い!wこの曲数だったから繰り返し聴けたものの、フルアルバムサイズでこのテンションを続けられてたら、参ってしまっていたと思う。

でもこういうコンセプト・アルバムというか、ひとつのテーマで作品を作るのは良いなぁと思いました。とてもアーティスティックだと思う。

 

andropってバンドは元々そんなに明るくは無い世界感を持ったバンドたと思うんですね。むしろ暗めで。

切なさ、ノスタルジア、哀愁、喪失…。そんなイメージを纏った曲はこれまでもいくつかあった。

今回の「blue」はそんなandropの一面が顕著に見られて、個人的には楽しかったし、心の何処かで「うんうん」と頷いていた。

なんだか触れてはいけない部分に触れてるようなちょっとした罪悪感というか、禁忌を犯してる感じが癖になります。

実際、「暗い作品が好き」って人、多いと思うんですよ。僕のTwitterのフォロワーさんにも結構多いと思う。笑

全部が全部そうあるのも重たいから(笑)、こういう風にミニアルバムとして、たまにめちゃくちゃ暗い作品を出してほしいなぁ。あ、他のアーティスト、バンドにもっていう意味で。

 

あ、あとね、「ミニアルバム」ってやっぱいいなって思いました。

昔からミニアルバムには魅力を感じていたのですけど、

音楽考察、0221。: andante(旧ブログから。5年前から思ってたのかw)

なんかコンセプティブなものを作りやすいし、価格も安く設定できるし、聴き疲れないしっていう。

ちなみに、僕が今制作してる作品もミニアルバムです。(予定ではw)

業界的にもっともっと流行ればいいのになぁ、ミニアルバム。

 

…そういうわけで。

andropを知らない人に最初にオススメ出来るような作品ではないけれど(笑)、もしandropを何かで知って、今後彼らの作品を揃えようと思っているのなら、ススメたい。そんな作品。(ちなみに最初に聴くなら、やはり「relight」をススメたい。それか「door」。)

 

そして、新たなスタートを切ったandropのこれからにも注目したいですね!

 

以上だす!