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音楽の事をあんな視点、こんな視点から綴ります。

世知辛いよ!がんこちゃん!

小学生や中学生の頃、極稀に風邪などをひき、学校を欠席する日があった。

そんな日は決まって、布団に入り、ぼうっとした意識で自室にあった小さいブラウン管でNHK教育を観ていた。今で言うEテレである。

朝の時間はどの民放も大人が見るようなニュース、ワイドショーを放映していたから、何も難しいことを考えずに視聴が出来るNHK教育というチャンネルがちょうどよかったのだと思う。

正確なタイムスケジュールこそ覚えていないが、「おかあさんといっしょ」や「むしまるQ」「つくってあそぼ」などといった番組の数々を微睡みながらよく観たものだった。

その中でも好きだったのが「ざわざわ森のがんこちゃん」という人形劇番組だ。

谷啓が歌う独特な主題歌(当時)、主人公であるがんこちゃんの天真爛漫さ、そして(後になって気づくのだが)声優陣の豪華さ。人形劇とはいえ少々知恵のついた学生が観てもなかなかに面白く、そんなふうにたまに、九州の片田舎から、ざわざわ森で起こる事件や出来事を生ぬるい目で見守っていた。

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今朝の出来事である。

ひょんなタイミングでEテレにチャンネルを回すと、まさに「ざわざわ森のがんこちゃん」が放送されていた。昔も今も変わらず、ざわざわ森では今日も何かしらの事件が起きているようだった。

驚かないで聞いてほしいのだが、ざわざわ森になんと、「スマートフォン」が普及していたのだ。

恐竜時代に寄せてか、石を切り出したようなデザインの「フォンフォン」と呼ばれるスマートフォンを、がんこちゃん含めほとんど全員が所持し、がんこちゃんらの先生であるヒポ先生(カバの女教師)に至っては軽くフォンフォンに依存してしまっていた。きっと有名カバモデルのインスタグラムなんかを見ているのだろう。知らんけど。

(フォンフォンを手にする序盤を観ていないので調べてみると、フォンフォンといういわゆるスマートフォンは大昔に人間という生物が使っていた道具、ということだそう。それを校長が発掘したのだとか。がんこちゃんって遠い未来の話だったんですね。

フォンフォンをみんなに配る際、見慣れない手がひとつフォンフォンを取っていって…)

 

そんな中、自室で友達と通話を終えたがんこちゃんに着信が入る。

受話し、画面を見ると見たこともない女の子が映っているではないか。

 

「あたし、ターラ。あなたは?」

「わたし、がんこちゃん!」

「がんこちゃん!何年生なの?」

「一年生!」

「ええ!わたしも一年生なの!…ねぇ、お友達になってくれる?」

「うん、いいよ!」

「それでね、今から砂漠にある私の家でパーティーするの!遊びに来てよ!」

「ええっ!今から!?…でもパーティー楽しそう!行く行く〜!」

 

あっという間に親睦を深める二人。

がんこちゃんは家族がいる居間を通り抜けながら「行ってきま〜す!」と声をかけた。

するとがんこちゃんの父や母が言う。「もうすぐごはんよ」「どこに行くの?」と。

がんこちゃんは快活に応える。

 

「ターラちゃんっていう友達のお家!パーティーがあるの!」

「ターラちゃん?だれ?」

「フォンフォンで出来たお友達!」

「フォンフォンで!?その子には会ったことがあるの?」

「ううん!でもお友達だよ!」

「がんこちゃん。会ったことのない人は"知らない人"よ。」

「えええ〜〜」

 

結局、「なんかよくわかんないから家族全員で行けばよくね?」という流れになり、その旨をターラちゃんに伝えると、「パーティーは子供だけのものだからまた今度にしましょう」と断られる。まぁ、パーティーにいきなり家族全員を連れてこられたら引くのも分かるのだが。

 

ターラちゃんは続けてがんこちゃんに問う。

「ねぇ、がんこちゃんには他に仲のいい友達はいる?」

「うん!いるよ!ツムちゃんって言ってカタツムリの女の子なの!絵本が好きなんだ!」

「ふうん、そうなんだ!」

 

場面が代わり、ツムちゃんのフォンフォンに着信が入る。

 

「わたし、ターラ!がんこちゃんのお友達なの!」

「がんこちゃんのお友達!う、うん!」

「がんこちゃんのお友達なら、わたしのお友達でもあるわ!ねぇ、今からウチでパーティーするんだけど、来ない?」

「今から!?今からはちょっと…」

「そっかー。あ、ねぇ、あなた絵本が好きなんだってね!わたしも絵本好きなの!」

「ええ!そうなんだ!そう、絵本大好きで、ほんとは学校に返さなきゃいけない絵本をまだ借りたままにしてあるくらい好きなの、へへへ」

「え…それはよくないよ」

「え?」

「絵本を返さないと、学校から追い出されちゃうよ?あたし、先生に言っちゃおうかな」

「え…や…」

「でもツムちゃんは親友だから、黙っててあげる。

ねぇ、パーティー、来るよね?わたしたち、親友でしょ?」

 

ツムちゃんは不安になり、がんこちゃんへ電話をかける。

 

「がんこちゃん!ターラちゃんのパーティーのことなんだけど…」

「ええっツムちゃんパーティー行くの?!」

 

「はーいダメー!!」

突然、がんこちゃんの母がフォンフォンを取り上げる。ごはんの時間だそうだ。

突然通話を切られたツムちゃんは「がんこちゃんはもうパーティー会場にいるのかな…」と勘違いをし、出かけてしまう。

 

夜の砂漠。

砂丘の向こうにターラちゃんを見つけたツムちゃんは声を掛けるが、振り向いたターラちゃんを見てツムちゃんは驚愕する。

 

一方がんこちゃんはパーティーに行ったであろうツムちゃんを羨ましがり、眠れない。こっそり家を抜け出すことに。

砂漠までやってきたがんこちゃん。ツムちゃんと同じ様に砂丘の向こうに見つけたターラちゃんのそばに、白い糸でぐるぐる巻きになったツムちゃんを発見する。

 

実は、ターラちゃんというのは悪いクモだったのだ。

ターラちゃんという人形を使い(おそらくタランチュラからネーミングしたのであろう)、縄張りにおびき寄せて、捕まえる。

がんこちゃんもクモの糸で捕獲されたのだが、持ち前のバカヂカラで、逆に蜘蛛を引きずり回し、成敗する。

やがて、がんこちゃんの不在に気づいた両親が探しに来てくれ、がんこちゃんとツムちゃんを優しく叱る。

 

「いいかい。しらない人に、じぶんやおともだちのことをおしえるのは、あぶないことなんだよ」

「子どもだけでしらない人にあいにいかない!わかった?」

 

この事件をきっかけに、「安全な使いみちがみつかるまで」という名目でフォンフォンは没収になりましたとさ。

 

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察しのいい人ならお気づきであろうが、これは現代のSNS社会を表現している。

ネット上で仲良くなり、なんでも知った気になって友達や恋人もどきが増えていく。だけど、一度も会ったことが無い。それで本当に「知ってる人」だと言えるのだろうか、というメッセージが暗にではあるが、辛辣に語られている。

 

しかし、ちょっと待ってほしい。

これ、実はハートウォーミングな物語に出来たはずなんです。

テレビ電話が出来る機器で、知らない誰かと友達になる。その友達は遠くに住んでいるからなかなか会えないけど、やっと会う事ができ、友情を確かめ合う…という物語にだって出来たはずで。

でも、時代ですね。そういう物語には出来ない。スマートフォンという機器が子供にとって危険な可能性を孕んでいる以上、「スマートフォン上での出会い=こわいもの、いけないもの」という構図にするしかない。実際そういう事件もたくさんあるから、そりゃそうだ、なのだけど。

ネット上で知り合った人も、悪い人ばかりではない。むしろ悪い人の方が少なくて、でも悪い人だから大きく取り上げられる。悪い人が悪いのに、悪い人が利用した物まで悪くなる。

 

世知辛い

このままもっと「悪いもの」を中心とした物語ばかりになってしまったら、めげず、しょげず、泣かずにいられるだろうか。

 

www2.nhk.or.jp