大坪加奈の声に夏が溶ける。
Spangle call Lilli lineというバンドがいる。
すぱんぐる、こーる、りり、らいん。
僕はこのバンドの事を10年近く好きで居続けている。
SCLL(と略すことにする)の音楽はなかなかに特異であると思う。
ハンターハンターで言えば特質系だと思う。
ちなみに強化系はGREEN DAY。
変化系はレディオヘッド。いや分かんないけど、イメージである。
ロックミュージックというのは多様化していて、「これはロックなのか?」と問われるとなんでもロックになりえるし、なんでもロックではなくなってしまう。
SCLLの音楽にジャンル名を当てるのであれば、「ポストロック」になると思う。
実際、僕がSCLLを知ったのもレンタルCDショップの「ポストロックコーナー」に置いてあった「Nanae」というアルバムをジャケ借りしたからであるし、間違いないと思う。
- アーティスト: Spangle call Lilli line,大坪加奈
- 出版社/メーカー: Pヴァインレコード
- 発売日: 2002/11/10
- メディア: CD
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ポストロックというジャンルをどう解釈するかによるけど、SCLLはやはり日本人が作る音楽である。そこにはポップさがある。日本人が聴いていて心地良い音階や展開が。
僕はSCLLにポストロックとしての1つの完成形を見た気がするんです。
これだけ雰囲気重視というか、歌詞も語感や耳触りを意識し内容には特に意味を持たせないスタンスだし、精力的な活動をしてるわけでもない。(それでもCDは10枚以上リリースしてるけど。)
そのスタンス自体がとても好感が持てるというか。羨ましい!と思ってしまう。
これだけ肩に力入れずに、マイペースに、飄々とし続けてるって、凄い。
聴けば一発で分かるのだけど、SCLLの音楽は他の誰にも真似出来ない。
こういう音楽やりたいなって思っても、きっと出来ない。
それには、ボーカルの大坪加奈の歌声が大きく関係していると思う。
知る人は知っているだろうけど、秦基博の楽曲で「猿みたいにキスをする」という曲がある。
そこでゲストボーカルとして招かれているのが大坪加奈である。
(「Documentary」に収録されてますな。僕はこのアルバムの中でこの曲が1番好きですね。次に「メトロフィルム」。)
秦基博の声って凄いんですよ。秦基博が歌えばなんでも秦基博になっちゃう。
隣にスキマスイッチの大橋氏がいても、山崎まさよし氏がいても、ミスチルの桜井氏がいても、パワフルな声を持つSuperflyこと越智志帆がいても、彼の声は一瞬で空気感を変えてしまうくらいの魅力がある。
でもどうだろう、この「猿みたいにキスをする」という楽曲においては、秦基博を喰う勢いで大坪加奈の魅力が爆発している。気付いたら頭では大坪加奈の声だけを追ってしまっている。そしてもっと大坪加奈成分を!となり、聴いていた「Documentary」から変更してSCLLを聴いてしまう。秦基博、ごめん。
ふわふわとした浮遊感もあれば、透き通るような透明感もあるし、たまにドキッとするくらい冷たく鋭い声だったりもする。
大坪語と言われるくらい、歌詞の内容よりも音楽にフィットさせた言葉選びと発音のせいで何を歌ってるかはほとんど分からないのだけど、そこにやたら惹かれてしまう。
聴いていて、SCLLの音楽、及び大坪加奈の声は、ちょうど今くらいの季節から環境や心身に馴染んで行くのだなと感じた。
夏の終わりから秋の始まり、そして冬。空気が含む湿度が低くなり、大気が澄んで行くような感覚を覚え始めるこの頃に、まるで夏を溶かすように馴染んでいく。
表現が詩人のようになってしまったけど、実際そう思ってしまったのだから仕方ない。お願いだからギップル出てこないで。
いつもなるべくその季節や環境、心的状態に合った音楽を聴きたいと思ってるタイプなので、こういう発見というか気付きがあると嬉しくなってしまう。
ただ、そんな事が言いたいだけの記事でありました。
最後に、現段階での新曲をご紹介しときますね。
Spangle call Lilli line 「tesla」(Official Music Video)
これ。2015年に発表された新曲。アルバム未収録。
なんだこの後半からの展開は。美しすぎてビビる。凄いのは、BGMとして聴いているとさらりと流れてしまうところ。これだけの世界観を持っているのに、さらりと聴けちゃう所も凄い。不思議だ。
そもそも、僕は彼らの音楽について何かを語れるようなレベルではまだ無いのかもしれない。
というか、もう、言葉いらなくね?